ヴォイニッチの科学書 |
2005年 10月15日更新 | Chapter-81 ノーベル化学賞
2005年ノーベル化学賞は「有機合成におけるメタセシス反応の開発」に携わった3人の研究者に授けられました。
メタセシス反応は有機化合物の位置が交換される反応です。有機化合物の多くは炭素炭素二重結合を持っています。通常はこの二重結合は安定ですので、二重結合の左右を置き換えるような反応は非常に難しいものです。ところが、ある種の触媒を使用すると、この二重結合が一気に離れて、別の二重結合と片割れと再び二重結合を作る平衡反応が起きることがわかりました。有効な触媒が考え出されるまでは、何段階ものステップを踏んで結合を切り離したり、意図しない反応が起きないように保護をしたりしながら同様の反応を行わなければならなかったものが、ワンステップで反応を進めることが出来るようになり、効率が非常に向上し、無駄な原料を使用する必要や反応を進行させるために加熱する必要などが無くなったので環境負荷の低減にもなりましたし、これまで人工的に作ることのできなかった複雑な分子を合成することもできるようになりました。 | | |
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2005年 10月08日更新 | Chapter-81
2005年ノーベル医学生理学賞とヘリコバクターピロリ
2005年ノーベル医学生理学賞が西オーストラリア大学のバリー・マーシャル教授とロビン・ウォーレン名誉教授に授与されることが発表されました。対象となった研究は胃潰瘍の原因微生物であるヘリコバクターピロリの発見とその後の研究です。 | | |
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2005年 10月01日更新 | Chapter-80 ロボットスーツHAL
人間の出せない能力をサポートする「モビルスーツ」か
愛・地球博に医療・福祉ロボットスーツHALが出展されました。これは流行の自律型のロボットではなく人間と機械が一体となって人間の能力、特に腕力や持久力を強化する世界初の「魔法の機械」とも言うべきものです。HALを装着する人は手足の関節の要所要所にシール状のセンサーを貼り付けます。これがHALのコンピューターにつながっており、手足を動かそうとするときに身体から出る微弱な電流を測定し、その情報をデータベースと照らし合わせて装着者がこれからどのような身体の動きをしようとしているのかを予測し支援します。
HALには、このような人間が思い通りの行動を支援する「随意的制御機構」の他に、ロボット自らが動作する「自律制御機構」つまり、装着した人が自ら身体を動かそうとしなくても、あるいは動かすことができなくても人間の身体性を考慮した適応的運動パターンが生成され、ロボットとして自律的に人間のように動作を生成する機能も搭載されています。
つまり、「随意的制御機構」では人間の力を装着者の意志の通りに増強して、生身ではできないような力や持久力の必要な仕事を支援し、「自律制御機構」では疾患や事故によって失われた手足の機能をコンピューターによって作り出して補うというわけです。
柔軟な姿勢がとれ、大きな力で物を動かしたり、自分の力を一切使わずにお年寄りを抱きかかえたまま保持し続けたりといったことも可能なうえ、支援の度合いを調整することもできるため、重作業分野や災害レスキュー分野あるいは、患者や老人を抱き上げる必要のある介護・医療・福祉、リハビリのサポートやスポーツのトレーニングなど多くの分野での活用が考えられます。 | | |
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2005年 09月17日更新 | Chapter-79
アスベストの健康被害について
アスベストは耐熱性、防音性に優れた安価な材料として一九六〇年代から一九九〇年代中頃まで建築資材や電気製品の絶縁体などとして毎年二〇〜三〇万トンも輸入されていました。アスベストが健康に悪影響を及ぼす可能性はすでに一九〇〇年代中頃には知られており、肺線維症、肺ガン、中皮腫などの原因物質であると報告されていました。当初はアスベスト製品の向上や施工に携わっている労働者の職業上の疾患であると思われていたものの、最近では就業者ばかりでなく、その家族や近隣の住民までもが健康被害を受けていることがわかり重要性が再認識されています。
アスベストが原因となる最も恐ろしい疾患が中皮腫で腹膜、胸膜にできる悪性腫瘍です。アスベストは目に見えないほど小さな針状で空気中を漂っており、呼吸と共に肺に吸い込まれ、肺胞細胞に突き刺さります。マクロファージによる異物除去機能が働きますが、アスベストは安定性が高いので分解されず、逆にマクロファージの方が死んでしまいます。肺胞の細胞に刺さったアスベストが原因で腹膜、胸膜に悪性腫瘍ができるメカニズムはまだ解明されていませんが、中皮腫の原因のほとんどすべてがアスベストの吸入にあることは間違いないようです。
アスベストに暴露して発症するまで三〇年以上を要し、しかも悪性中皮腫が診断されたときには他の臓器に転移してしまっていることが多いため、外科治療も有効でない場合があり、放射線治療や化学療法が行われます。アメリカでは悪性胸膜中皮腫治療薬が承認されていますが、日本における化学療法は肺ガン治療に準じています。しかし、症例数が少ないため、効果については未知の部分が多くあり、予後不良な疾患であるというのが医療関係者共通の認識となっています。 | | |
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2005年 09月10日更新 | Chapter-78 新幹線高速試験電車 FASTECH360 のテクノロジー
FASTECH360(ファステック360)は JR東日本が「足音を立てずにある邦子にあやかりたい」とネコ耳を装備して開発した最新型新幹線の試作車両です。営業速度 360km/hr を想定して今後綿密な試験運転が行われる予定です。 | | |
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2005年 09月03日更新 | Chapter77 人間の進化について
人類はチンパンジーやゴリラと共通の祖先から進化しました。共通の祖先からゴリラの祖先が別の進化をたどり始めたのが七〇〇万年前前後です。それからわずか一〇〇万年後の五〇〇〜六〇〇万年前に人類とチンパンジーが分岐しました。DNAの比較研究からもゴリラよりもチンパンジーの方がより人類に近いことが確認されています。
その後、人類は猿人、原人、新人と進化を続けましたが、チンパンジーと分岐した直後の最古の人類はオルロリン属と呼ばれています。膝と腰を伸ばす二足歩行を始めたのは五〇〇万年前のラミダス猿人、もしくは四〇〇万年前のアナム猿人です。その後三〇〇万年程度は特に目立った進化上の分岐を示す化石は見つかっていません。その後、一〇〇万年前〜三〇〇万年前にかけて猿人は様々な分岐を経験します。現在化石として見つかっているのは一般にアウストラロピテクスとひとまとめに語られるアフリカヌス猿人、エチオピクス猿人とその進化形であるボイセイ猿人とロブストス猿人です。これらはいずれも一〇〇万年前までに絶滅したものと思われます。
猿人から原人への進化は二〇〇万年前頃で、歯やアゴが小さく、大きな脳を持つことで特徴づけられます。人類が進化上最後の分岐を経験したのが二〇万年前で、私たちとは別の道を歩み始めたネアンデルタール人は石器の作成、火の使用、仲間の埋葬などの高度な知能や文化を持っていたものの約三万年前に絶滅しました。ネアンデルタール人が現代型ホモサピエンスの祖先であると考えられていたこともありましたが、現在はミトコンドリアDNA鑑定から完全に否定されています。 | | |
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2005年 08月20日更新 | Chapter-76 技術の進歩が「テザー衛星」を復活させる
軌道上の宇宙ゴミは人工衛星や国際宇宙ステーションに衝突すると甚大な被害を及ぼします。これらでぶりの除去にテザー衛星技術が使えるのではないかと考えられています。 | | |
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2005年 08月13日更新 | Chapter-75 ホエール・フォールの不思議な生態系
クジラが死んで海底に沈むとその死体は膨大な海の生き物に食料を提供することになります。何組織は鮫や魚類のエサとなりますが、骨格を中心とする残った死体にはやがて、環状動物やカニ・エビ、バクテリアなど膨大な数の生き物から構成される独特の生物相が出来上がり、これを「ホエールフォール」と呼んでいます。数十種類のホエールフォールでしか見られない独特の生物が発見されており、海洋生物学者の新たな研究対象となっているばかりでなく、この特殊な環境で生息する生物の二次代謝産物や酵素を産業に利用する研究も行われています。 | | |
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2005年 08月06日更新 | 試験管の中で頭ができました。
臓器を作るために四苦八苦しているように見える最近の最新科学ですが・・・実は試験管の中で頭もすでにできています。ポイントは「アクチビン」と呼ばれる物質です。カエルの受精卵におけるアニマルキャップと呼ばれる細胞の集まりにアクチビンと呼ばれるサイトカインの一種を作用させるとその濃度によって様々な臓器を作り出すことができますが、さらに細胞の培養条件を工夫することによってオタマジャクシの頭や下半身を作ることができました。 | | |
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2005年 07月23日更新 | Chapter73 シリーズ今週の人工衛星
・スロッシュサット・フリーボ
・すざく | | |
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